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「川柳まがい」という言葉

山崎涼史
「川柳まがい」という言葉が往々にして使われている。現に『平成柳多留』第三集の会長仲川たけし様の序文の中ではこう使われております。“川柳進展を迎えた今日、必ずしも正常な川柳と一言えない短詩文芸変形の「川柳まがい」の横行を見るとき、本書ほど現代日本の川柳の全体像を表す書はないと言えましょう”。そして同じ『平成柳多留』第二集の第二回全日本川柳誌上大会の特別選者のお一人神田仙之助様の川柳エッセーの中にも使われております。それはこうです。“何ともいいようがない単なる「川柳まがい」の単文に過ぎないものは、別に新しい名称をつければいい、川柳はあくまで川柳でいてほしい”。私より遥か目上のお二方のご文面からのご無礼を顧みずのことは深くお詫び申しあげ、お許しを乞う次第です。しかし、この「川柳まがい」の言葉の意味するものは二通りと思うのですが、そのどちらにも大賛成でありますので、あえてペンを執らせていただきたくなったもので、重ねてご容赦をお願い致します。
私も来年一平成九年一は八十四歳八回目の干支へ入りますが、故川上三太郎先生が晩年に言われた“凍史は川柳を作ってきたとは言えない。ただ川柳に従いて来ただけだ”本当にそのお言葉通りで川柳に従いて六十八年間となってしまいました。しかし、こんな従いて来ただけの私としても思うことはあります。たしかに今は会長様始め皆様方のお陰を以て社団法人全日本川柳協会は逐年発展の一途を進みつつあって、本格川柳、いわゆる川柳の本流はいよいよ繁栄を続けておりますが、一方「川柳まがい」の横行もまたすさまじいものが具現されておるように見られることがまことに残念でなりません。私が川柳の師と仰ぐ方々はいずれも故人となられたが、原田寿南史様、川上三太郎先生、村田周魚先生、それにほんの僅か教わったのに過ぎなかったが阪井久良伎先生ですが、諸先生ともこの「川柳まがい」などは歯牙にも掛けず、本当の川柳のみを教えて下さいました。有難いことだったと今も肝に銘じております、、私も幾つか初心者や盲人の川柳教室などを担当しておりますが、この方たち、また他の人たちにも機会あるごとに、諸先生や、先輩友人等の言われた本格川柳の好訓佳言などをお伝え致しております。それが七十年近くも川柳に従いて来た者の務めであると信じておるからです。
「川柳まがい」のものを作っておられる方々よ。どうか本

 

 

 

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